池田 理代子
月明かりが脳髄まで差し込む夜、あなたの内なるワタシが目覚める。丸尾末広の描く『月的愛人 LUNATIC LOVER’S』は、日常に潜む狂気と恐怖が突如として顔を出す珠玉の短編集だ。一見平穏な世界が、猟奇的で淫靡な美しさに彩られ、人間の深奥に潜む闇を暴き出す。収録作には「耳ナシ芳一」や「無抵抗都市」などがあり、それぞれ独立した物語が織りなすのは、読者の心を深くえぐる残酷な幻想だ。耽美的でグロテスク、そしてどこかユーモラスな筆致で描かれる、唯一無二の悪夢的体験がここにある。