高浜寛
遠く三味線の音色が響く幕末の長崎丸山。そこに蝶のように舞い、人々を魅了する絶世の花魁・几帳がいた。彼女は客を選ばず、時に異人の相手も率先して務める変わり者だ。だがその行動の裏には、重い病を抱えた愛しい男への秘めた想いが隠されていたのだ。一度は身請けされながらも、愛する夫と義理の息子のために再び遊郭へ身を置くことを決意する几帳。華やかな遊郭の光と影、そして過酷な運命に翻弄されながらも、ひたむきに愛を貫こうとする彼女の姿は、読者の胸を強く打つ。緻密な時代描写と繊細な筆致で紡がれる、切なくも美しい純愛の物語だ。