久住昌之
輸入雑貨商を営む井之頭五郎。彼は仕事の合間にふと立ち寄った店で、一人静かに食事をするのが常だ。メニュー選びの葛藤から料理が運ばれてくるまでの期待感、そして一口食べたときの感動まで、五郎の心の中で繰り広げられる食への探求が、緻密な心理描写とともに淡々と描かれる。高級店ではなく、街の片隅にある大衆食堂や定食屋で、ただひたすらに目の前の料理と向き合い、その味を噛みしめる。劇的な展開は一切なく、まるでドキュメンタリーのように進む物語は、読む者の胃袋と心を満たす、唯一無二の“ひとりめし”の魅力に溢れている。